今日の紹介はSE SO NEON(セソニョン)というグループです。
女性1人(ギター、ヴォーカル)男性2人(ベース、ドラムス)の3人組ロックグループですが、ギター、ヴォーカル、作詞、作曲をしているSo!YOon!(ソユン)の実質的ワンマンバンドと言っても過言ではないと思います。
K-POPを聞き始めると、ソングキャンプという共同での曲の制作方式に代表されるように、その組織的に徹底した創造体制が、良質なエンタテイメントを生み出すことに驚きを覚えるわけですが、一方で時々、個人レベルでのとんでもない才能にぶち当たることもあります。
このソユンはその中でも、私の今までの長い音楽生活の中でも出会ったことがないような、まさに異才、奇才と呼べるミュージシャンだと思います。
この人の話が出ると、必ず坂本龍一がわざわざ韓国に会いに行ったというエピソードが出てくるほど、ミュージシャンズ・ミュージシャン(プロの音楽家が好きなミュージシャン)として有名です。
ではここでまず一曲Joke
この人の特徴は色々あり、まずヴォーカルスタイルは、ファルセット(裏声)で歌うことが多いのですが、女性にしては低めの地声に戻る瞬間もあり、ここからしてもあまり聞いたことがないヴォーカルスタイルで、私も最初に聞いた時は、男性なのか女性なのか全くわかりませんでした。
ファルセットをメインに歌う歌手と言えば、私の世代ですとアース・ウィンド・アンド・ファイアのフィリップ・ベイリーや、もっと前だとスタイリスティックスなど、いずれにしても黒人系男性の、きれいなバラード向けの歌い方というのが常識でした。
ソユンの特徴は、ハードロック系の曲でもファルセットで歌うところで、そこに一気に彼女の唯一無二の個性が誕生します。
そしてたまに、力強い地声が出てくることで、曲のコントラストがはっきりとして、陰影のある世界が展開されます。
なぜ彼女はこのような歌い方をするのでしょうか?
WINTERという曲を紹介した時にこのようにMCで言っていました。
「この曲は」愛」を歌っていて、普通「愛」は美しいもの、儚いもの、無条件のものなど良いイメージですが、私にとっての「愛」は汚いもの、怖いもの、避けたいものなどのネガティブな要素もあり、この曲は「愛」の両面性を表現している。」
彼女たちの曲を聞いていると、この二面性、両面性をすごく感じます。
ハードロックなのに切ない、バラードなのに力強い、悲しいのにうれしい、歪んでいるのに美しい、このような両面性を表現するのに、彼女のファルセットと地声を組み合わせる歌い方がぴったりなのでしょう。
ここではバラード(と言っても普通のバラードではない)の大傑作Winterを聴いていただきます。
彼らのバンドサウンドはどうでしょうか?
私の世代から聞くと、限りなく70年代ロックの香りがします。
3人組なので、エリック・クラプトンがいたクリームを彷彿とさせ、実際にヘビーな曲は、クリームのプロデューサーのフェリックス・パパラルディが結成したマウンテンのサウンドに似ていたりします。
一方で、やはりK-POPのバンドだけに、1曲目のJokeで聞いただいたようなファンキー(今時使う言葉ですか?)な要素も多く、70年代後半から80年代にかけて流行って、その後絶滅した黒人のヴォーカル&インストルメンタルグループのサウンドに近いです。
たとえばアイズレー・ブラザースやキャメオのような。
彼女のは刻むギターが、非常にファンキーなリズムギターである一方で、ギンギンのギターソロになると、フィンガリング(ピックを使わない)なのですが、一気にジミヘン(ジミ・ヘンドリックス)に早変わりです。
ジミヘンは一時アイズレー・ブラザーズのギタリストだったこともあり、この辺も共通するのでしょうか。
ファルセットでうっとり聴かせるバラードもあれば、今時珍しい、かなり長いギンギンのギターソロを聞かせるハードロックの曲もあり、これを全部1人でやってしまう振り幅全てがソユンの魅力であり、すごい才能です。
そして最後になりますが、一番重要ですが、彼女の作る曲がまた一筋縄ではいかなくて、どれもユニークかつすばらしい曲ばかりです。
Youtubeには去年のサマーソニックで出演した時のライブビデオなど、幅広い彼女の魅力がわかるビデオが色々出ていますので、是非見てみてください。
ここでは、最後にしつこいですが、私の大好きなWINTERのMVをもう一つ上げておきます。
これは「ユンヒへ」という韓国映画のMVの形になっているのですが、この映画を知る前に、WINTERの画像を漁っているうちにこのMVを見つけ、映画を知り、早速映画も見ました。
てっきり映画にこの曲が出てくるものと思い、見ていたのですが、結局この曲は映画には影も形もなく???だったのですが、結論から言うと、この曲のおかげで知ってよかったこの美しい映画と、この曲の世界観がぴったりということです。
たぶん、この3分間のMVを見たら、あなたも必ずこの映画を見たいと思うはずです。
(ちなみに主演は「夫婦の世界」の名優キム・ヒエさんです。)
それではまた。